糖尿病網膜症
糖尿病網膜症
糖尿病は、主な症状としては体重減少やのどの渇き、足のけがが治らない、そして、目が見えなくなってから気づくことがあります。内科で糖尿病と診断されている患者様のなかには内科で血糖コントロールを厳密にしていても急激な低血糖が続くことがあります。
そして、実際に糖尿病には腎臓や足の神経のみならず目の合併症が潜んであり、長いこと内科にかかっておりますが眼科を数年も受診されていないケースを聞きます。
糖尿病網膜症という合併症が隠れていることがありますので、糖尿病と診断されたら眼科へ受診することをおすすめします。
糖尿病網膜症は糖尿病の三大合併症の一つ
網膜は細かい血管が密集しています。
そのため、高血糖状態が続くと眼内の血管が徐々に詰まって、網膜に栄養や酸素が届かなくなります。
そのような状態になると、網膜に新しい血管(新生血管)が生まれ、酸素不足などを補おうとします。
しかし、この新生血管はもろくかつ、硝子体出血しやすく、悪化すると増殖膜を形成します、その結果牽引性網膜剥離を起こし、失明の原因にもなります。
糖尿病網膜症は、糖尿病の合併症として起きてくる目の病気です。予備軍も含めると2,000万人といわれる糖尿病の患者数の多さもあって、糖尿病網膜症は緑内障とともに成人してからの失明の大きな原因疾患となっています。
また、糖尿病になってから数年から10年以上経過して発症するといわれていますが、患者様の中にはかなり進行するまで自覚症状がない場合があり、まだ見えるから大丈夫という自己判断は危険です。糖尿病と診断された方は、目の症状がなくても定期的に眼底検査を受けるようにしてください。
糖尿病網膜症は、進行状態によって3段階に分けられ、治療法も異なります。なお、視力に大きな影響を与える「糖尿病黄斑浮腫」は、3段階すべてで現れる可能性があります。
単純糖尿病網膜症(初期)
血糖コントロールで改善できることもありますが、自覚症状がほとんどないため、定期的な眼科検診を受けることが重要です。網膜の血管壁が盛り上がる血管瘤、小さな出血を起こしている程度であり、血管から血液成分が漏れている状態です。
増殖前糖尿病網膜症(中期)
網膜の血管が広範囲に閉塞している状態です。酸素や栄養素が行きわたらなくなるため、新生血管というもろく破れやすい血管ができ始めます。かすみ目などの自覚症状があることもありますが、全く症状が現れないケースもあります。できるだけ早く適切な治療を受けることで進行を止める必要があります。
増殖糖尿病網膜症(進行期)
新生血管が破れて硝子体出血を起こし、飛蚊症や急劇な視力低下を起こすことがあります。繊維状の膜である増殖組織が網膜を引っ張って網膜剥離を起こすと、視野を大きく欠損させてしまうこともあります。視力を少しでも残すために、できるだけ早く手術などを受ける必要がある状態です。
検査をし、初期であれば「食事療法」「運動療法」「薬物療法」により、血糖値をコントロールすることで悪化を防ぐことができます。
血糖値を安定した状態に保つことができれば、小さな出血などは自然に消えることもあります。もちろん、他の治療を行う場合でも、血糖コントロールは継続することが必要です。
かかりつけの内科での血糖コントロールを行っていることを前提に当院でも生活指導をしていきます。
当院では、網膜症の進行具合によって、レーザーで網膜を焼く光凝固治療を行っております。適応といわれる疾患としては、おもに前増殖性糖尿病網膜症があります。
数回の通院が必要となりますが、外来診療で治療することができます。
早期発見ができれば、レーザー治療はたいへん有効で、視機能の回復は難しいといわれますが、将来の失明予防のために大切な治療です。
糖尿病と診断されたことのある方、高血糖を健診で指摘された方は、定期的に眼科にて検査を受け、早期発見・早期治療をされることをおすすめいたします。
糖尿病網膜症が進行し硝子体出血を繰り返す症例、増殖膜が認められた症例、血管新生緑内障を来す症例においては、ご相談の上連携医療機関を紹介させていただきます。